bg
みちしお  ~合同会社ポルト設立5周年を迎えての想い~
カテゴリー:ご近所めし
ゲストハウスPORTO(ポルト)門司港

いつの間にか日々は過ぎ、7月2日に合同会社ポルトは5周年を迎え、6期目に入りました。

 

しかしまあ、よく潰れてないなと我ながら感心するほどコロナ禍のこの3年は苦しく、本当にギリギリのところで踏みとどまり、働くスタッフや支えてくださっている皆さんのおかげで何とか生き長らえています。

 

本当に皆様ありがとうございます。

 

5周年ということもあり、例年「ポルトの株主総会」と称して行っている事業報告をポルトらしいイベントにしようと思っているので、それは改めて皆さまにお知らせしたいと思います。

 

今日は七夕なので、最近切に願っていることをキタキュースタイルさんがエッセイコンテストをしているので、エッセイ風に綴ります。

○キタキュースタイル第2回エッセイコンテスト

https://kitaq.style/essay_2nd/

 

 

みちしお

 

老松公園のセブンイレブンといえば門司港の人は大抵わかるし、大体みんな行ったことがある。

 

その横に赤提灯が特徴で、夜になると赤提灯がぽつんと灯るそのお店は子供の頃からずっと気になっていた。

 

大体出てくるのは地元のおいちゃん達で作業着姿の人達が多くて、お店を出る時はみんな陽気でご機嫌。

何がそんなに楽しいのだろうかと子供心ながら不思議に思っていた。

 

門司港に起業して戻ってきたのは2018年の時。社会人になって門司港を離れていたから、それまで門司港の飲み屋でお酒を飲んだことがほとんどなかった。

 

戻ってきてから「門司港で〆のラーメンってないですよね?」と聞くと、みんな口を揃えて「門司港で〆といえば”みちしお”やな。」と言う。「あぁ、あのセブンの横のお店だ。」と子供の頃から気になっていたお店の謎が解けた。

 

「みちしお」の〆はラーメンではなくチャンポンと何故かカツカレーの2つ。おでんも美味しいので、みんな大体おでんも頼む。

 

完全に余談だけど「みちしお」のチャンポンのレンゲはめちゃくちゃデカイ。おそらくレンゲ界でもかなり上位だと思う。

深夜2時ぐらいまで開いている深夜食堂のようなお店で、80歳のお母さんが店主のお店。

 

お母さんはめちゃくちゃ陽気で、常連のお客さんやお店を手伝っている義理の娘との掛け合いもおもしろく、よくガハガハ笑う。

僕はそんなお母さんが大好きで当時必ず飲んだら〆に「みちしお」に行っていた。

 

だが、2020年春突如として世界中でコロナが猛威をふるう。

 

「みちしお」のお母さんは高齢なこともあり、緊急事態宣言を機にお店を休業した。

しばらく会えず、2ヶ月振りにようやく会えたのだが、その姿は僕が知っているお母さんとは別人のように元気もなく、テンポの良い掛け合いをしていたとは思えないほど会話もぎこちなかった。

 

娘さんにお話を聞いてみると、お店を閉めたとたんに別人のように元気がなくなったらしい。

娘さんがそんなお母さんの様子をみかねて、緊急事態宣言が明けて少し経ってから、昼のお弁当の販売をお母さんと2人で始めることになり、お母さんも少しずつ元気を取り戻していった。

 

僕らもお母さんが心配なこともあって、その時期よくお弁当を買っていた。数年経った今ではランチ営業も始めている。
とても嬉しいことだけど、夜中に赤提灯がぽつんと灯り、おいちゃん達がチャンポンやカツカレーを食べながら飲んだくれている、あの大好きな「みちしお」の光景はもう見ることができない。

 

社会人で親元を離れてから、「お盆と正月の年に2回しか親と会わないとしたら、死ぬまでの間に数十回しか会えない。だから大事にしなさい。」みたいなことを先輩の方々からよく聞いていたけど、なんとなく実感が湧かなかった。

 

ただ「みちしお」の光景がコロナによって奪われた瞬間、とてもリアルにこのことを痛感した。

 

 

1つ1つのお店には1人1人の店主と人生と共に時は流れる。年月が経てば当然ながら大好きなお店もなくなり、大好きなあの店主にも会えなくなくなる。

毎年門司港ではお店が何店舗も閉まる。その度にその現実を突きつけられる。

 

 

門司港に限らず北九州にある僕の大好きなお店は「みちしお」のように高齢だけど元気なおいちゃん、おばちゃんが営んでいる。

 

 

もうあと何回食べられるんだろうと思いながら、日々美味しいご飯とその日常の光景を噛み締めている。

 

 

「1日でも長くこんな日常が続きますように」と夏の風物詩の七夕の短冊を横目に見ながら切に願う。

 

 

そして、きっと僕は明日もどこかで「こんな大盛にしなくてもいいのにな」と心で呟きながらおいちゃん、おばちゃんの作った大盛のご飯を食べる。

 

 

 

5周年を迎えて

 

ちょっと初めてエッセイ風に綴ってみましたが、最近常に思っていることです。

 

少子高齢化、地域の衰退という言葉をよく使いますが、そうすると広くなって何かしっくり来ないなと思うことが多々あります。

 

ポルト以外の仕事では大きな視点で取り組んでいるものが多いんですが、ポルトとしてやりたいは小さく些細な門司港の日常の光景を守ったり、紡いでいくことです。

 

これに何の意味があるのか?と言われると正直感情的なことで文化を守るとかそういう大層な表現をすると、それもちょっと違う気がしてます。

取材もたくさん受けているので、その度にきちんとした内容で話しているのですが、本当に伝えたい想いはもっと小さなことです。

 

ただそんな日常もいろんな要素が複合的に重なって作られているため、守るためには当然経済的な強さも必要になるなと痛感してます。

 

渋沢栄一の「論語と算盤」にもありますが、どちらも大事なことだなと最近とても思うことが多いです。

理想論や優しく美しいことだけでは日常は守れないけど、日々の営みの美しさや温かさも大切にしたい。

 

欲張りだとわかっていますが、自分はどちらも両立できる会社、そして社会の在り方をつくりたいと強く思っています。

まだまだ会社としても個人としても力不足なのですが、6年目も一生懸命もがいていきます。

 

BOOK NOW!!いますぐ予約する
top