埼玉から転職で越してきて早5ヶ月が過ぎようとしていた7月の終わり、ホームシックで日々泣き言ばかり言っている私に活を入れるべく、トンキン（＝東京）の友人が長崎でのポップアップスナック旅行に誘ってくれました。

 

※ポップアップスナックとは？

トンキンの友人で文筆家である山本梓（通称あずあず）と私、藏人が色々な地域の場にお邪魔してその日限りのスナックイベントを開催すること。ユニット名として地域こわし愚連隊の異名もとる。

 

冒頭からよく分からない話を失礼致しました。初めまして、現在は北九州でOLをやっております、藏人（クランド）と申します。駄文にお付き合いいただく事を感謝申し上げます。

 

プロフィールとしては上記の通り、フリーランス女将兼OLと言い張るアラフォー（41歳）です。

 

さて、2ヶ月ほど前の話を今更書き連ねているのには訳があります。今月23日（今日は9月15日）西九州新幹線が武雄温泉駅から長崎駅間で部分開業するという、コロナ禍で大打撃を受けた旅行および交通インフラ界隈においては久々のビッグニュースがあるからです。

 

そのビッグニュースの裏で前日の22日を以って現行の博多→長崎間を結ぶ特急かもめがその役目を終える事が決まっております。

 

ときは7月29日、昼過ぎの博多駅。トンキンから飛行機で福岡に降り立ったあずあずと博多駅で待ち合わせ。昼から小倉の街で呑んでいた私はほろ酔いで博多駅に降り立つ。

久々の長崎。しかも特急かもめに乗るのは初めてである私は高揚感を隠せないまま、どこか恥じらいながらエキナカコンビニで酎ハイを買い込んだ。

 

小倉の昼飲みによるほろ酔いで眠気もあった私は酎ハイを飲んだらすぐに眠りにつく予定であった。

 

ダラダラと飲むうちにかもめは鳥栖を過ぎ本格的に西へ向かい始めた。

 

鳥栖駅を過ぎてしばらく経った頃から、ある事に気が付いた。車窓からの風景のほとんどが水田や畑であるという事に。

 

元より関東在住であった私は九州の野菜を口にする事が少なかったが、佐賀駅を過ぎた頃からは車窓からの風景に圧巻された。

 

平野に大きく広がる水田と畑。もう見渡す限りがそれらの風景なのである。

 

米作がほぼゼロに等しい土地で育った私には水田が広がる景色がとても新鮮だったのである。

 

時期もよかったのか、青々とした稲が水田を覆っていたのである。

 

車窓からの景色を食い入るように見つめる。

 

ある意味単調な景色であるのだが、いくらでも見ていられる景色だ。

 

更にかもめは進み、祐徳稲荷神社で有名な鹿島市に入った頃からは、有明海の景色もちらほら見えてきた。

 

湾沿いに敷かれたレール上を進んでいくため、それまで快調に飛ばしてきたかもめは減速を余儀なくされる。

 

佐世保へ向かう路線と分岐する肥前山口駅からは、線路が1本になる単線となるため、行き違いで運転停車する事もある。

 

※運転停車とは駅には停車するが、旅客を乗せない停車方法である。即ちドアも開かない。

 

特急とは思えない位のスピードでのんびりと湾沿いを進むかもめだが、その風景がとにかく圧巻。

 

当日は天気が良かった事もあり、太陽が海面に反射して、キラキラとしたまばゆい光を放っていた。

 

外海と接する箇所が少ない海において、こんなに綺麗な景色を見せてくれるなんて。

 

海なし県に育った私はとても驚いた。

 

むしろこの景色は湾沿いを進む為かのんびりと進むかもめがびったりである。

 

水田が広がる景色からうってかわっての海をのぞむ景色に

 

確実に酔っぱらっているし、眠い筈の私の頭は覚醒した。

 

やがて佐賀県に別れを告げ、長崎県に入るも同様の景色は続く。

 

ただ諫早市に入ったあたりで様子がかわる。

 

昔、ニュースでもしきりにやっていた、諫早湾の干拓である。

 

このニュースについての個人的な意見は述べないが、湾を仕切るように

 

道路が通っている風景はちょっと異質なものであった。

 

その景色を通り過ぎて諫早駅を過ぎると再度、複線になりスピードアップを図る。

 

山中を貫く長崎本線の新線を通り長崎駅にかもめは滑り込んだ。

 

博多駅を出発してちょうど2時間であった。

 

様々に移り変わる車窓からの景色を見ているとあっという間の2時間であった。

 

さて冒頭の西九州新幹線であるが、佐賀県側の反対もあり今回は部分開業である。

 

博多→長崎は30分短縮の1時間半との事。もちろん新幹線が今までの線路を走る事はなく

 

山を貫いたトンネルを走る事になる。

 

もちろん時間短縮の効果を存分に享受できる方も多く、歓迎する向きは多いであろう。

 

ただ、特急かもめから見える景色は何物にもかえがたい絶景であった。

 

かもめ初心者の私が何か意見を言うのはどうかとも思ったが、

 

最後にこの景色を見る事ができた事だけはとても誇りに思う。

 

いつかまた鈍行列車で同じルートをたどってみたいと思ったおセンチな9月の夜。

 

おしマイケル。