空を見上げている。
ガイド(いつしか友人となっていた)の運転するスクーターのうしろに乗って。
ラオス・ルアンパバンの風を受け、明るく青い空を見上げている。
***
2011年の年末。わたしは一人、はじめての海外旅行を決行した。
「女 一人旅 はじめて 海外旅行 安全」
と仕事中にこっそりとパソコンで検索をし、女性の一人旅初心者にやさしい、とされていたラオスに行くことにした。
ラオスってどこだ……?
ベトナム、タイ、ミャンマー、中華人民共和国、カンボジアに囲まれ、メコン川が山岳エリアを縫うように流れる国。かつてフランスの植民地であったことから建築や食文化の影響を受けている。
当時のわたしは、はじめての一人で行く海外旅行に台湾でも韓国でもベトナムでもなく、ラオスを選んだ。
成田空港を出てから12時間後。タイ・バンコクから小さなプロペラ機に乗り換えて到着したラオス・ルアンパバン空港は、夕焼けに染まっていた。空港を出ると道は舗装されておらず、「なかなかなところに来たな」と早くもひるみそうになる己の心を気づかなかったことにして、タクシーに乗り込む。きれいな顔立ちの若き運転手が心配なことがあったら電話して! と名刺をくれた。
予約した宿へ到着。リゾート風の落ち着いたホテルで、金髪のおしゃれなマダムが出迎えてくれた。英語がちっともできないわたしに「大丈夫か、この子?」という怪訝な表情にも、気がつかないふり。
夜は、ひとり歩いて行ける野外のレストランへ。提灯がならぶお店でラオスのビール・ビアラオを注文し、いい気分。チキンの料理を頼み、一人では食べきれない量が出てきたので、隣のヨーロッパから来ていたグループ客に、「よかったらこれ食べませんか?」と酔った勢いで、皿を押し付けて宿へ戻る。そういえば、この日はクリスマス・イブだった。
今思い返しても、よくやったなあと思う。不安な心をだましだまし、気がつかないふり、もよく使っていたもんだ。もう来ちゃったんだから、しょうがない、というばかりの決意、覚悟、覚悟。
翌日は、ホテルから歩いて15分ほどのところにある「王宮博物館」へ。ガイドブックの地図をくるくるさせながら歩いていると、突然少女が声をかけてきた。腕には数珠のようなアクセサリーをたくさんぶらさげている。
「アクセサリー ハンドメイド トラディショナル」
としきりに言っている。木の数珠をひとつ、手にとって値段を聞いてみる。
ひとつ10000キープだと言う。1万キープか。日本円にしても100円もしないよな、たしか。これで100円ならいいか、とその数珠を買った。
少女はものすごく嬉しそうにサンキューと何度も言って足早に去っていった。
あとで知ることになったのは、彼女に大金を渡していた。わたしが計算する日本円と現地の物価は違うんだ。
少女とその家族がいいクリスマスを過ごしてくれたらいいか……なんて、この認識でよかったのか。
「王宮博物館」を見てまわる。かつての王様の肖像画、大きな絵である。
「……昔のラオスの人たちは、大きな身体をしていました。いまはみんな身体小さいけど」
日本語の案内が聞こえてきた。
反射的に、そちらの方に行く。少し年上に見える男性が一人でガイドの説明を聞いていた。日本人だ……!
とっさに声をかけていた。
「すみません。日本から来たんですが、なにもかもわからなくって困っていて。わたしも仲間に入れてくれませんか?」
ガイドのひとも、日本人男性も、驚いた顔をしてこちらを見ていた。
(パート2につづく……)
編集者/文章を書く人/ときどきチーママ。
東京に生まれ、雑誌社の編集を経てフリーランスに。旅が好き。公共交通が好き。フーテンの寅さんにあこがれている。ポルトお茶の間劇場のこじらせ長女(勝手に言ってる)。
「麓(ふもと)出版」や、死生観をカジュアルに語る「Soup to Nuts」、ポップアップスナック「地域こわし愚連隊」、母娘のおしゃべり「うんたったラジオ」ほか、遊びや気づきから活動をひろげ、この度の「門司港をクリエイティブで爆発させる」にももちろん参加。
【新ブログ】 https://note.com/jamamotocapisa/