ジンジャーハイボール
常連さんが、
「兄ちゃんおつかれ。1杯おごるから飲みなよ。」
そう言ってくれたお言葉に甘えて、今日注文が入ってからずっと飲みたかったジンジャーハイを自分用に作った。
今日はぼちぼち忙しかった。
自分が出勤する日はあまり忙しくないという不名誉な噂があるのだが、あながち間違いでもないなと自分でも思う。でも、今日はぼちぼち忙しかった気がする。
あ、
でも、週末なのに2階席を使わなかったから、やっぱり自分の変なジンクスが影響していたのかもしれない。
このことをいじられる度に、余計なお世話だと思いながらも、いつも苦笑いをしてしまう。
「昨日は楽しかったね」
ラストオーダーも終わり、カウンターの常連さんだけになった店内で、店主が言った。
昨日は3年ぶりの花火大会だった。みな、久しぶりのお祭りにそわそわと朝から浮足立っているのを感じた。
自分は初めて参加するお祭りだったが、地域の人のそわそわした感じはどこかほほえましくて、かわいらしかった。
いざ花火があがると老若男女問わずみなうれしそうに眺めている。
のかと思いきや、平気で出店の注文したり、花火そっちのけでかき氷を食べながらだべっている姿を見ると、ほんとここの人たちは自由でいいなと思う。
待ちに待ったハレの日を、それぞれで楽しんでいた。
ただ、店主がいう楽しかったは少し違ったらしい。
花火大会終わりのお客さんらと、店を閉めてから二軒三軒とはしご酒。
わちゃわちゃなのかいちゃいちゃなのか、酔っぱらって記憶があいまいな常連さんをいじり倒す店主。
野郎が集まり酒を飲み、お姉さんに鼻の下を伸ばして、さぞ楽しかったんだなと推測する。
みな好きに過ごした一夜だったんだなと
しみじみしながら、氷が溶けたジンジャーハイをぐいっと飲んだ。